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購買診断20万円の社内稟議が容易ではないと伺いましたので、少し、この資料で補足させていただきます。
購買診断の主たる目的は勿論7種の本契約を成功させるためですが、それ以前に、本契約をしなくても得られる価値もお伝えした方がよいと考えました。
購買診断の結果を使って現行品の値下げ交渉をやると言うことです。20万円以上の成果が出せたら出費分を取り戻したことになりますよね。
下記は、“値下げ交渉のキーポイントが何であるか?”を検証したデータです。
“担当者の交渉能力が最も重要”と言う常識がありますが、果たして本当なのでしょうか?
実はもっと重要な要素があると分かったのです。
勿論、実際にやって見ないと確かなところは分かりません。しかし、20万円を獲得するのは不可能ではないと確信しております。
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協力していただいた38名の方(私が講師をしているコストダウンセミナーの受講者:無差別)には、2名で一組、買い手役1名と売り手役1名のペアになっていただきました。
A)与えられた条件
買い手役、売り手役に与えられた条件はほぼ同じで、下記の通りです。
原料名: ICA
単価: @400円/kg
購買量: 80t/年
取引先: 日本国内のA社(国内メーカーは1社のみ)
用途: 難燃助剤
尚、売り手役には、これ以外の情報として、
輸入価格がCIF95円/kg
であることを密かに伝えておきました。又、値下げしてもしなくても構わないが、できるだけ値下げを食い止める努力を要望としておきました。
B)交渉の結果
19組の個々のデータは割愛しますが、@330-400円/kgの範囲が攻防の価格帯でした。
あいにく、交渉時間が5分と短かったために交渉決着は372と380円/kgであった2組だけで、17組が未決着で時間切れとなりました。
従って、正確には言い切れませんが、決着したとしてもそのような値下げ幅が結論になったことでしょう。
C)何が欲しかったか?
買い手役であった19名の方に下記の質問をしました。
* 交渉は満足であったか?不満足であったか?
* その理由は何でしょうか?
その結果、不満足が16名(84%)でした。そして不満足の理由は、目標価格を定められず、自信が持てないと言うことでした。
では、次は、実験その2です。
価格交渉実験2
次は、2回目です。ペアは今までと全く同じ役です。
A)与えられた条件
下記の通りです。
原料名: ICA
単価: @400円/kg
輸入価格: @95円/kg(CIF)
購買量: 80t/年
取引先: 日本国内のA社
用途: 難燃助剤
買い手役に新たに追加された情報は、下線の部分です。
即ち、価格交渉に先立って【輸入価格】をお伝えしたのです。
さあ、結果はどうなったと思いますか?
B)交渉の結果
上述した価格交渉実験1と対比する形でご説明いたしましょう。
(攻防価格帯の変化)
下図の通りでした。
Beforeとは買い手役が輸入価格を知らなかった場合、afterは輸入価格を知ってしまった場合です。
青棒には実験1で既に決着してしまった2組が含まれていない、赤棒には実験2で決着してしまった13組が含まれていませんので厳密には比較はしにくいのですが、大多数の傾向として言えることは、下記のようになるかと思います。
* 買い手役に輸入価格が分かっている場合、攻防価格は100円玉レベルの値下げ幅に設定される。
* 買い手役に輸入価格が分かっている場合の攻防価格は大きなバラツキ幅が発生する。(個人差)
* 買い手役に輸入価格が分かっていない場合、攻防価格は10円玉数個レベルの値下げ幅に設定される。
* 買い手役に輸入価格が分かっていない場合の攻防価格はバラツキ幅が狭い。(個人差は出にくい)
このまま交渉が継続できたとした場合の決着価格は定かではありませんが、少なくとも価格交渉実験1よりも大きな値下げを獲得できる人が多いのではないでしょうか?
(決着価格)
下図の通りになります。
青棒には実験2でも決着できなかった6組が含まれていない、赤棒には実験1で既に決着してしまった2組(左側の2本)が含まれていますので厳密には比較はしにくいのですが、大多数の傾向として言えることは、下記のようになるかと思います。
* 買い手役に輸入価格が分かっている場合、決着価格は100円玉レベルの値下げ幅を獲得できている。
* 買い手役に輸入価格が分かっている場合の決着価格は大きなバラツキ幅が発生する。(個人差)
* 買い手役に輸入価格が分かっていない場合、決着価格は10円玉数個レベルの値下げ幅に留まっている。
* 買い手役に輸入価格が分かっていない場合の決着価格はバラツキ幅が狭い。(個人差は出にくい)
尚、未決着の残された交渉の結果は定かではありませんが、買い手役に輸入価格が分かっていない場合の6組の値下げ幅は10円玉数個に留まることになるのではないでしょうか?
(価格交渉の満足度)
結果は下図です。
買い手役が目標価格に自信が持てないbeforeでの大多数の不満足感と、輸入価格を手に出来た場合の値下げ交渉後の満足感はこんなにも違うのです。
(満足の理由)
買い手役が感じた満足の理由は下記の通りです。
<輸入価格を知らなかった場合>
・390円/kgが確保できたので
・狙い通りの価格だったので
・逆に値上げを交渉時に言われた中でもそこそこ値下げできたので上出来
<輸入価格を知ってしまった場合>
・すごい値下げになりそうだから
・100円/kg以上安くなるから
・想定価格を達成できたから
・妥当な価格が実現できたから
・最終的には@200円/kgまで行けそうだから
・半値になったから
・半値になったので上々で、3月には更に再交渉をするつもり
・半額と予想以上に大きな成果を獲得できたから
・言い分が100%通ったから
・Win-Winの折半が狙えたから
・確かな価格情報のお陰で上手く行ったから
・候補先のサンプル評価が未だの中での成果としてはまずまずだったから
・サンプル評価未だなので上出来と思ったから
・主張がほぼ通ったから
・目標に自信を持てたから
・少々の値下げでは駄目と分かったから
これを纏めると、結局、下記のようになっているのではないでしょうか?
*輸入価格を知らなかった場合は、値下げ幅が10円玉の世界でも満足しており、これでは他人を納得させられない自己満足では?
*輸入価格を知った場合は、買い手の言い分が一気に通りやすくなり、値下げ幅は100円玉レベルで、達成度を冷静に判断できるようになって他人を納得させられる状況が作れた
(不満足の理由)
下記のようになっています。
<輸入価格を知らなかった場合>
・いくらならよいのか分からないから
・要求していても自信が持てないから
・目標が明確にならなかったから
・目標価格の設定が不安ありだから
・対応可能なベストプライスが分からないから
・妥当な価格が分からないから
・本当の価格が分かればいいのだが
・このレベルでよいものか分からないから
・他社見積を取らないと分からないから
・情報不足で、交渉にならないから
・海外@は安いと思うから
・えいやっと狙いを決めて臨んだから
・せめて10%と思っていたので
・380にしかたっかのに叶わなかったから
・320が完全に拒否されたので
・売り手がどう出るか見通せないから
・売り手のフルコンテナ納入条件では買い手がリスクを被ることになるので
<輸入価格を知ってしまった場合>
・今から原料確保をどうしようかと不安が生まれたから
・200+α円/kgまで行きたかったから
・1回目の交渉を350円/kgでやっていたので強く迫れなかったから
これを纏めると、結局、下記のようになっているのではないでしょうか?
*輸入価格を知らなかった場合は、目標価格を定められず、腰が決まらないまま交渉する格好になって強い交渉ができなくなっているのではないでしょうか?
*輸入価格を知った場合は、確信持って目標価格を設定できたので不満の質が高くなり、供給停止対策の必要性を感じる進化が始まった
(売り手役のコメント)
最後に、売り手役の気分はどのように変わったのかを見てみましょう。
<輸入価格を知られていない場合>
・こちらの本心を読まれないように気を遣った
・こんなにも販売価格が適正価格と異なることが本当にあるのか?と思った
・笑いを止めるのに苦労した
・ばれるとやばいけど上手く言ったなと思った
・海外の実情を知っていたのでむず痒かった
・しめしめ、上手く言ったなと思った
・随分販売価格には値下げできる余裕が未だあるなあと思った
・手を打ちたかったが値下げしたことの重みを買い手に見せたくなった
・10%値下げでも纏まった販売が見込めるので満足できた
・5%OFFぐらいなら許そうと思っている
・大切にすべき客なのか判断しかねた
・強気で押し通した
・強気で通せたので満足している
・1社供給体制なので強気で様子見できた
・増量を要求しながら決着は5-20%のどこかにしようと思った
・持ち帰った後の結論として「360円/kgは無理だった」と言うつもり
・上流原料高騰による値上げを持ち出して値下げを帳消しに出来たので上手く言った
・こちらの主張通りなら実質的に値下げしなくて済む
・海外他社の状況は売り手にも分からないのが現実では?
<輸入価格を知られてしまった場合>
・買い手の言い分を飲むしかない気分
・こんなやり方をされたのは初めてで恐ろしいことだ
・仕方がないがもっと強気でよかったのかも?
・継続取引の約束を取れたのでよしとする
・辛かったが失わないことに注力した
・95円/kgを知られてしまったので弱気になってしまった
・失うよりはましと思って利益大幅減じても仕方ないと手を打った
・切られるよりはましと思って合わせるしかなかった
・非常にきつい、社内説得が心配である
・どうして社内調整しようかと困ってしまった
・将来の増量が見込めるのでよしとした
・サンプル評価が未だと聞いたので強気で押せたし長期契約も約束させた
・95円/kgを知られてやりにくくなったが輸入@は変動激しいとアピールしたら上手く成功した
・強気で上手く通せたなとホッとした
・この程度なら納得するしかないかもと感じた
・まだまだ決着せずに粘るつもり
・そんな安値を言われたので販売を諦めるしかなかった
・本心は280円/kgにしたかったが思うようにならず、しかし@200円/kgになれば販売を諦めるつもり
・自分こそ自社品販売でなく輸入転売に切り替えるべきと思った
これを纏めると、結局、下記のようになっているのではないでしょうか?
*輸入価格を知られていなかった場合は、売り手は余裕を満喫しており、交渉中にしたたかな演技や言質取りなど自由自在に出来ている実態が垣間見えたのではないでしょうか?
*輸入価格を知られてしまった場合は、一転して苦しい立場に追いやられて失注食い止めに躍起になったり、販売断念の覚悟も固める必要に迫られたりする。しかし、そんな中でもしたたかに抵抗しようと努力していることの一部が不思議にも功を奏していることもあったりで、一時凌ぎのセールストークに揺り動かされない買い手の論理性強化も必要ではないでしょうか?
以上で、結果の説明は終わりです。
何が決め手だったのか?
何が決め手だったかもう明らかでしょう。
結局、輸入価格を知った効果がいろんな面で大きな違いを生んだことは歴然としています。
特に価格面では、10円玉数個の攻防を繰り広げていたのに対して、100円玉の攻防にガラッと変わっています。勿論、決着価格も同様に大きな差が出ました。
紛れもない【輸入価格】のデータが、買い手役の【目標価格】になったのです。
ところで、御社では目標価格をどうやって決めておられますか?
それは、絶対的な根拠があるものですか?
目標価格は、購買担当者レベルの勝手な思いではなく、誰でも納得できるレベルのものになっているでしょうか?
・・・・・これが是非とも気付いていただきたいことでした。
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